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自分に何ができるのか。公開講座からヒントを見つけた。 大学院日本語教育研究科 修士課程2年 加藤香代さんの声

子どもたちに日本語を教えるヒントを求めて

2016年4月から、早稲田大学大学院日本語教育研究科の公開講座を受講しました。私は当時、小学校の教員をしていました。勤務する小学校は外国人の居住者が多い地域にあり、外国人の子どもたちが多く通っていました。彼らの中には日本語をほとんど話せない子もいました。そのため、彼らに個別で日本語を教える「国際教室」ができました。2015年より、私がその教室で日本語を教えることになったのですが、まったく日本語を話せない子どもに教えることは、初めての経験でした。

これまでの経験や知識を駆使しながら教えてみたのですが、どうもうまくいきません。どうやら今までのやり方は違うようだと考えた私は、県や市が主催する研修に行ったり、イベントに出席したりして、いろいろな場にヒントを求めました。そんなときに、たまたま参加した「子どもの日本語教育研究会」という研究会で、様々な立場の人が子どもたちのことを考えて発表する姿を見て、感銘を受けました。その中に早稲田大学の大学院生もいました。「早稲田大学には日本語教育を学ぶ場所があるのかもしれない」と思ってホームページを見てみたところ、誰でも受講できる、大学院日本語教育研究科の公開講座を見つけました。

学校現場以外の視点に触れ、価値観が変わった

すぐに申し込み、公開講座を受け始めました。前期の全10回、さまざまな講師の方が2回ずつ、各専門のテーマに講義をされます。土曜日午前中の2時間なので、比較的通いやすかったのも助かりました。受講者は50人程度で、私のような学校の教員は少なく、地域で日本語に関わるボランティア活動をしている人や純粋に日本語教育を学びたい人など、様々な立場の方がいました。授業はどれも対話を大事にするもので、受講者同士で話し合い、学び合うことがメインでした。

最初の2回のテーマは、“年少者日本語教育”でした。私はそれまで、「学校教育における子ども」という見方をしていたのですが、そのときの講師は、「世界的な規模で子どもたちは親の都合などさまざまな理由で移動していて、母国語とは別の複言語、複文化の中で育っている。どんな場であれば、子どもたちがことばを学べるのかを考えなければならない」という話をしてくださいました。

公開講座を受講したことで、子どもの今だけでなく将来も見据える必要性をまなびました。私は今まで、目の前の子どもに少しでも分かってもらいたい一心で、日本語をどのように教えたらいいのか、教え方ばかりを探していたのです。そうではなく、彼らに必要なことばは何なのか、どういうことばを獲得したら友達とコミュニケーションがとれるのか、あるいは授業を理解できるようになるのか、といったことを考えられるようになりました。

世界を舞台にこれまでの学びを生かしたい

毎日子どもたちと接していた私は、時間をかけてもっと専門的に深く日本語教育について学びたくなりました。そこで、周囲には驚かれましたが、思い切って小学校を早期退職し、大学院の修士課程に進みました。現在、修士2年生で、それまで教えていた小学校の国際教室の教育サポートをしながら、日本語教育を研究しているところです。

早稲田大学の公開講座を受けたことがきっかけとなり、大学院に入学し、様々なことを学んでいます。長年抱いてきた固定概念を捨て、価値観の再構築をすることは厳しいことではありましたが、大きな視野を持って日本語教育を考えられるようになったのは、大学院での学びのおかげだと思っています。

修士課程を修了した後に何をするかは、これからゆっくり考えたいと思います。日本だけでなく、海外にも複言語複文化の中で学んでいる子どもたちはたくさんいます。学校現場にとらわれず、世界的な視野を持ち、大学院で学んだことを活かせる場所を探したいと考えています。

私のように大学院まで進むケースは稀かもしれませんが、もし、今の現場で問題意識を持っている人がいれば、ぜひ気軽に公開講座を受講してみてください。ヒントを得られる貴重な機会になるはずです。

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